†幻想螺旋†

脳内観察哲学日記と化した高校生観察帳。

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A Requiem.

A Requiem.
       †

ボクには昔姉がいた。
姉の姿は、小さいころから最期まで家で見ることは無かった。
誰も知らなかったと思う。誰にも教えなかった。(少なくともボクは一生のうちで一番巧く嘘をついていたつもりだ)
病院で会うたびにまるで水に波紋が出来るように笑った。ただ、静かに。
誰にも教えなかった。その時間だけは命を賭けてボクだけのものにしたかった。
今は会わない最初に親友と呼んだ奴にも、何だかんだ言って後ろに着いて来るお節介にも、墓まで持っていく秘密の共有者にも。

絶対に、教えなかった。

だから、
小学校低学年のころ、
姉の居場所に空虚が居座ったときも、
誰にも悟られなかった筈だ。(少なくともボクはそのつもりだ)

全く想像しなかった訳じゃなかった。
子供ながらに姉が寿命で死なないことは想像がついていた。
ぐらぐら揺れる現実と夢のスキマで生きているような姉だった。
両親が姉と一緒に居たところを見たことが無かった。
ボクが姉と共に思い出すのは、常に真っ白な個室と、真っ白なシーツと、真っ白な布団と、真っ白なベッドと、真っ白なカーテンと、真っ白な肌と、真っ黒な眼と髪。
それから真っ赤なナニカの色。
それだけ。
額縁の絵のように、配色を変えないまま、其処に居座った虚無と景色。
それからナニカの赤い色。
赤い色だけがはみ出て、食み出て、ボクの心に噛み付いてぶら下がっている。

赤い色が目に付いてはなれない。
「アカ」に対して「赤」の言葉しか知らなかった僕は、

その血色を唯、赤とだけ覚えている。

降り注ぐ赤色のかげ、白から噴出す赤いモノ。光って堕ちる鉄の色。
身体にかかる赤い色、暖かい雨。冷たい鉄の色。
覆い被さる力無い姉、暖かい体温。傷口。

気を失ってそのまま、何も知らないまま。
白と黒に赤を混ぜてその部屋に屍を抱えて。
ボクは一体どうして僕にならずに居られよう?

親も近づかない「精神病」などと言われていた姉。
「ボクから言わせて見ればお前らが病気だ」と思っていた。
自分たちと違うセカイからモノを見ていれば病気か。
自分たちと違う考え方をすればそれは魔物で化物か。
ならばボクは壊れた化物になってもいいと思った。

だから姉はボクのために死んだ。
彼女は最期にボクを呼んだ。
           シモベ
ボクは、思い出の「僕」になった。

きっと姉を死なせてしまったのは僕です。でもそれを聞いたら姉はどうするだろう。
僕のために自ら死んだ姉はどうするだろう。
だから僕は欺き続けたしボロも出さなかった筈だ。
一回途中までばれたけど。
一回途中まで言ったけど。

それでも最後までは言わなかった。
僕は此処に自白する。

僕は――狂っている。歯車の欠けた玩具。
唯、意味も無く、クルクル、狂狂と回り続ける螺旋。

葬式には行けなかった。身内のごく少数しか行かなかった葬式に。
骨も拾えず、僕は結局現実感のない空虚を心に居座らせた。

姉の病院に行っている時間を悟られないために喧嘩をした。
姉に会う時間を作るために友達との共有時間も減らした。
だから、それが必要なくなったとき、ボクは意味も無く勉強を始めた。
それでも絶対に悟られないように、ずるがしこい無邪気な嘘を混ぜながら。
中学受験をすると思われていた。いや、思わせていた。
そうすれば無駄な時間が削れたから。
そうしたら何時の間にか中学受験をする人と同じくらいに出来るようになった。
塾のテストでも何度も彼らに勝った。
でもだから何だろう。
僕は空虚をうめるために、無駄なことを考えないようにそんなことをしていた。
今もそれに違いない。勉強は苦痛じゃない。当然のこと。姉に会いに行くように。


だから――大切な人を失うことは誰よりも知っていると思う。
姉であった恋人を失った僕は考えない葦になってしまった。

だから、心に出来る空虚の重さは知っている。
僕は、それだけ血を浴びた。

ああ、軽蔑してくれて構わない。
僕はそれだけ空虚を嘘で塗り固めたような人格だ。


最後に
大切な友人を失ってしまった人へ、命を失ってしまった人へ。

此処から追悼します。

         †

      A Requiem.

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最近だいぶビターだけどね。

  • 20061226
  • Darkcat ♦-
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  • 20061226
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